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冬の湖水を歩いて。(澄み切った大気のなかで見えて来るこの世のマトリックス)本栖湖の湖岸を一周した。 ウォーキングを兼ねてのつもりが、周囲12kmもあるのを考えていなかった。 夕暮れまでには車に戻れたが、ややもすると危ういところだった。 本栖湖は、富士五湖のうち最西端に位置する湖で、奥まったところにあるだけに人の手からはひそやかに守られている、なかでも神秘性を保った湖水だ。 最大深度が138mもあり、標高は西湖、精進湖と同じ900mで、この三湖は地下でつながっているらしく、水位が連動するらしい。 冬の冷え々した大気のなかを歩くのは、とても身が引き締まる思いがして心地いい。周遊道路の半分は凍結によって車両は完全閉鎖されているので、人以外に入って来るものはない。わずかに岸辺に立つ釣人の影が見えるほどに、湖水のまわりは静寂に包まれていた。山蔭の路面は、分厚い氷の層がまるで硝子を溶かして覆ったように輝いていた。 思いつくとき行って見たいと思う場所で度々訪れるのだが、このときはいつになく水の透明度が限りなく高かった。浅い場所では湖底の小石がきらきら陽に輝いて見えた。深みの色は、陽光が当たるとことはエメラルドグリーンに、翳るところでは濃紺に、色彩の純度は高かった。透明度は16mを誇るというようだが、数値以上に水の生きているのがはっきり感じられ、湖水の波動の高さが今年の光の降下を明らかに物語っていた。 このような自然の姿に直に触れる美しい場所にいると、不思議なことにその対極の人に制覇された人工の都市世界のことを考えるものだ。いつもはそこに関わらざるをえない自分が、幾分そのエリアから遠くに避所を得ているからもあるが、離れてこそ遠くに客観的に顕れて来るものなのかもしれない。 人工都市世界というより、個人に複雑にまとわりついたこの世のあらゆる呪縛、それは社会システムでもあるし、社会規範でもあるし、つくられたコモンセンスでもあるかもしれないが、それ以上に現実世界を超えてからめとられている精神の牢獄、つまりそれらの総体、総称であるいわゆる“マトリックス”を意識することになる。 我々は“ゴイム”の語の如く、見えない巨大な力に飼育され、閉じられた惑星ドームの中で使役されているに過ぎないのではないか?見える世界、見えない世界を跨いで、これらを見通す何者かによって、巧妙に操作され、騙され、脅され、恐怖で操られ、幻想の自由を餌に搾取され、偽の法を行使され、使用価値の尽きたときは廃棄されるという、獰猛野蛮なプロセスに閉じ込めれているだけではないのか。それにさえも気づけないように巧みに教育されて、疑念も持てないように洗脳を施されているのではないのか。 そんな遠い昔からどこかに抱いていた考えが、この清らかに冷ややかに澄みわたたった冬の湖の傍らで、意識の霧が解けるように実感を伴って露になって来るのだ。 映画『マトリックス』(The Matrix)の“モーフィアス”と“ネオ”との対話シーンをいつも思い出す。この作品の白眉はこの言葉に尽きる。ウォシャウスキー兄弟のメタファーは、はからずも99年時点でその後の展開を待たずに既に世界の実相を暗示していたのだ。911以降の雪崩を打った虚構の崩壊が始まっているのは既に周知のとおりだろうし、それをもって覚醒と謳う風潮にも辟易もしているが、情報による目覚めを足場に、立ち遅れている意識の内部世界のディスクロジャーを急ぐこともまた、現実世界の解放と共に天のはからいの動きが加速するところであろう。 Blue Pill or Red Pill - The Matrix (2/9) Movie CLIP (1999) HD モーフィアス:
by martin310
| 2014-01-30 11:28
| スピリチュアル
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