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だいたい、よく知った自然の場に行くと、大概同じようなアングルで写真を撮ることが多いようだ。
ここ、箱根の芦ノ湖西岸では、やはりこの湖畔の道をこんなアングルでファインダーに収める。そこで感じたものを絵にしようとすると、自ずから構図は自分流の同じものになり、過去に撮ったものとあまり違わない画像が残っていく。
ただ、この日の湖畔の道は、冬の光景からか、緑に覆われた頃の欧州の古い景色の一幕のようなものから、一転して、日本の江戸末期の頃の宿場風の雰囲気をどこかに感じていた。
脳裡には、いつか見た、江戸期の古写真にある、箱根宿で撮られたイメージがダブっていたのかもしれない。
箱根の古い景色は、当時の外国人写真家によってけっこう作品に残されていて、その中でも、後に絵の具でモノクロ写真に彩色したものがあり、どうもその擬似カラー写真の世界にあるイメージにつながっていたのだろう。
この樹木の姿や土の道、そして道に映じた影法師の感じが、レトロな世界へイメージを牽引するようだ。
そう言えば、この道は箱根宿へつながる道で、いわゆる東海道の街道から分かれた先にある。それも1キロと離れてはいない。
右上の写真の箱根宿とは目と鼻の先だ。
だからか、どうも道の彼方から編み笠と脚絆姿の旅装束の人が歩いて来てもおかしくない気がする。
背に負った荷を道の脇に寄せて腰を降ろし、この青い湖を眺めながら一服吹かしてもいい。ここはそういうほっと一息つく場所のようだ。
当時の古写真に、芦ノ湖の風景を撮ったものがいくつかある。湖の雰囲気やまわりの山々の姿は、今も当時もほとんど変わりはない。
ただ、当時は今の常緑の植林された森はなく、すべてが自然林だった。湖畔に立つ建物も木造の古風なもの。
湖水に落とす山々の影が、青く澄んだ湖に憂いのある風情を与えていた。
それに、今よりいっそう、湖とその周囲の森の持つ精霊のエネルギーに満ちていたようだ。そういうものを、古写真の情景から読み取る。
ただし、この湖は他に数あるものよりは、数段、湖の持つ「氣」をよく保存している。観光地として俗化されているエリアがごく限られていて、人があまり入らない区域がかなり多くを占めているからでもある。
ほかに、そういう守られ方をしているのも、湖の精霊の力量が反映しているからでもあるだろう。
この湖畔の道の奥へ行けば、行くほど、その度合いの強くなることがわかる。
それはある種の神域のように、竜神の意匠を借りて保護の手を厚くしてあるのかもしれない。
いつまでも、こうあってほしいものだ。
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